2022年09月09日

使われなくなったIT機器の末路 ~電子廃棄物(E-waste)~とは?

 

 

電子廃棄物(E-waste)とは?

電子廃棄物(E-waste)とは、バッテリーや電気・電子回路を搭載している電気・電子機器の廃棄物の総称です。

英語ではE-waste(イーウェイスト)、またはWEEE(ウィー)と表記されることが多いです(WEEEは主にヨーロッパで使用される表記)。電気・電子機器の具体例としては、冷蔵庫・冷凍庫、エアコン、テレビ、コンピュータ、洗濯機、食洗機、掃除機、体重計、携帯電話、おもちゃなどが挙げられます。いずれも、日本に住む多くの人にとって、身近な製品ですね。

さて、これらが世界で、どのぐらい廃棄されているかご存じでしょうか?

 

 

電子廃棄物(E-waste)は2019年には世界全体で5,360万トン発生しており、これはひとり当たりに換算すると約7.3Kgにも上ります。

生活水準の上昇、進む都市化、グローバル化、そして一部地域での工業化の促進により、電気・電子機器の量はどんどん増えています。そして、その修理の選択肢が少ないことや、その消費率の高まり、ライフサイクルの短さなどが原因で、電子廃棄物(E-waste)の量も増加しているのです。

電気・電子機器製品は私たちの生活をより便利なものにしてくれる一方で、その製作には非常に多くのリソースが求められます。また、使用しなくなったもの(廃棄物)を適切に処理する仕組みの確立がその生産・消費スピードに追い付いていません。

2019年に正式に確認された回収/リサイクル量は約930万トンと、廃棄物量全体のわずか17.4%に過ぎず、残りの82.6%がどのような運命をたどったかは不明です。2014年以来、電子廃棄物(E-waste)のリサイクル量は計180万トン増えましたが(40万トン/年)、しかし電子廃棄物(E-waste)の発生量は実に計920万トンも増加しているのです(200万/年)。

現在排出されている電子廃棄物(E-waste)の量は、私たちが安全にリサイクルまたは処分できる能力をすでに超えていますが、2030年までに、その総量は7,470万トンになると予測されています。

 

 

 

 

 

電子廃棄物(E-waste)が抱える問題とは?

電子廃棄物(E-waste)の抱える問題として、大きく3つが挙げられます。

 

 

1.地球温暖化問題

2019年に、不適切な方法で廃棄された冷蔵庫やエアコンから大気中に放出された温室効果ガスは、二酸化炭素換算で合計9,800万トンと推計されており、これは同年の世界のエネルギー関連排出量の約 0.3%に当たります。

なお、同年に行われた、電子廃棄物(E-waste)中の鉄、アルミニウム、および銅のリサイクルは、1,500万トンのCO2の削減に貢献しました。

電子廃棄物(E-waste)の材料を適切にリサイクルすることによって、処理過程で大気中に放出される温室効果ガスの排出量を抑えるとともに、一次原材料の抽出と精製時に発生する温室効果ガスの排出を削減することができるのです。

 

 

 

2.資源の消失

電子廃棄物(E-waste)には、リサイクルすれば二次材料として使用できる貴金属やそのほかの重要な原材料 (金、銀、銅、プラチナ、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、オスミウムなど)が含まれており、2019 年に発生した世界の電子廃棄物(E-waste)の原材料の価値は、約570億米ドルに相当します。

しかし前述の通り、リサイクルされたのは全体の17.4%にすぎないため、環境に配慮した方法で回収された貴金属やそのほかの重要な原材料は100億米ドル相当にとどまっています。

 

 

 

3.健康被害

低中所得国ではまだ電子廃棄物(E-waste)の適正な処理が難しいにも関わらず、多くの電子廃棄物(E-waste)が高所得国から輸出されてきています。※高所得国では、電子廃棄物(E-waste)のおよそ8%が埋め立てまたは焼却されており、7%〜20%が低中所得国に輸出されているとみられています(中古品として再利用されるための正規の輸出も、電子廃棄物(E-waste)の違法輸出も、どちらも含みます)

電子廃棄物(E-waste)には貴重な原材料が含まれると同時に、水銀、臭素系難燃剤 (BFR)、クロロフルオロカーボン (CFC)、ハイドロクロロフルオロカーボン (HCFC) などの有害物質も含まれています。 そのため、電子廃棄物(E-waste)の増加、回収率の低さ、そして不適切な処理は、環境と人間の健康に重大なリスクをもたらします。非正規ルートの処理で環境中に排出される水銀は毎年約50トン、 BFR プラスチックは約71,000トンと考えられており、これらの有害物質は例えば未熟児の出生や呼吸器・免疫系の病気、皮膚疾患、癌などの増加に関係していると言われています。

非正規の廃棄場で働く労働者には、大人も子どももいます。からだに悪い環境だとわかっていても、非正規の廃棄場で得られる収入は国の平均収入を上回るため、彼らは働き続けるのです。

彼らは、大量に燃やされた電子廃棄物(E-waste)から出る有害な煙を吸い込んだり、腐食剤や化学物質と皮膚が接触したり、そして汚染された食品や水を摂取したりすることで、深刻な健康被害のリスクに常にさらされています。特に子ども(胎児〜青年)は、洗っていない手をつい口に入れてしまったり、その辺の物や土を口に入れてしまったり、などといった行動習慣や、そのほかの要因から、大人よりも被害を受けやすいと考えられています。さらに、一部の有害化学物質は、妊娠中や授乳中に母親から子どもへとうつる(母子感染)こともあるとの研究も出ています。

 

 

 

これらの問題への対策として、私たちにできることは何か?

電気・電子機器は私たちの私たちの生活を便利なものにしてくれ、またすでに多くの場合、私たちの生活に根付いています。これらを使用しないということは非現実的ですが、安易に新しいものに買い換えず電子廃棄物(E-waste)を増やさないこと、使用し終わった後の電気・電子機器を適切な方法でリユース・リサイクルする、またはリサイクルできないものについては、適切な方法で捨てることが大切です。