グリーンウォッシュ(GREEN WASH)とは
「グリーンウォッシュ」とは、簡潔に言うと「見せかけの環境対応」です。1980年代に生まれた造語で、消費者からの「真に環境負荷が低いものを選びたい」という声の高まりと共に、世界中に広まってきました(*1)。『電通サステナビリティ・コミュニケーションガイド』では、宣伝や広報での以下のような行為をグリーンウォッシュと定義づけています(*2)。
- 実態がないのに環境に配慮しているように見せること
- 実態以上に環境に配慮しているように見せること
- 不都合な情報を見せずに、良い情報のみを見せること
具体的には、実態や科学的根拠がないのに「持続可能性」「生分解性」「環境配慮」等を広告で訴求し、環境意識の高い消費者を獲得しようとする行為などを指します(*3)。
欧州では「グリーンクレーム指令」で規制を強化
欧州では、2005年や2011年にEUで制定された法律を通じグリーンウォッシュを規制してきました。2023年3月にはEUの執行機関の一部である欧州委員会(EC)が「グリーンクレーム指令」を出し、環境問題への関心が高い消費者がより正しい選択をできるように、規制が強化されています。この指令の対象には、EU 域外に拠点がある企業も含まれているため、多くの企業が対応を迫られています(*4)。
同指令のウェブサイトでは、環境配慮を訴求しているコミュニケーションの53%に曖昧な表現が使われており、主張の 40% に裏付けとなる証拠がないという調査結果を公開しています。こうした事態を受け、これまで規制されていなかった以下のような表現も規制されることになりました(*5)。
「パッケージに再生プラスチックを30%使用」
「企業の環境フットプリントは 2015年以来20%削減されました」
「本製品に伴うCO2排出量は2020年比で半減」
上記が対象となってしまう原因は、表現の曖昧さにあります。他の製品や企業、認証機関が定めた基準など、公正に比較できる情報やデータに基づいていない点が問題とされます。製品全体の環境への影響の集計やラベルは、EUで認められた方法でなければ許可されません(*6)。自社比較や出所がはっきりしない再生プラスチックの使用の主張は、受け入れられないのです。こうした表現の代わりにEUが認めた公正な集計方法による発信や、EUエコラベルやEMASといったEUが認めている認証の取得、発信が推奨されています(*5)。
「Apple Watch」も批判の対象に
2023年12月、アップルが「Apple Watch」の一部モデルに関してカーボンクレジットによる相殺で「カーボンニュートラル」だと謳っていることに対し、消費者団体がグリーンウォッシュだと訴えました(*7)。
Apple Watchへの批判の裏にあるのは、クレジットによるカーボンニュートラルはグリーンウォッシュにあたるという考え方です(*8)。背景には、カーボンオフセット自体の意義への懐疑、クレジットを購入すればCO2を排出して良いという考えになりかねないという懸念等があります。
今年1月にはEUの欧州議会で、クレジットによるカーボンニュートラルの主張を2026年までに禁止することが決議されました(*9)。なお、これに先立って英国では2023年から、広告基準局がオフセットでのカーボンニュートラルをアピールする広告の国内使用を禁止しています(*10)。
グリーンウォッシュ規制の動きは、他の国々にも広まっています。2021年にはカナダ競争局が「環境訴求とグリーンウォッシュ」を発表。グリーンウォッシュには法に基づく措置がとられると明記しています(*11)。韓国では2023年2月、グリーンウォッシュで消費者を欺いた企業に最高300万ウォン(約33万円)の罰金を科す法案を発表しました(*4)。日本でも2022 年 12 月に消費者庁が生分解性プラスチック製品を販売した10 社に対し、十分な根拠がないとして再発防止などの措置命令を出しました(*3)。
企業に求められる姿勢
企業が環境への配慮を行うこと、それを企業活動に活用すること自体は、悪いことではありません。実態が伴わないことや見せかけであることが問題になります。
ゲットイットでは「Sustainable Computing®(サステナブル・コンピューティング®)」という言葉を掲げ、持続可能なIT社会を目指して企業活動を行っています。当社もまた、まだまだ長いその道のりの中で、完璧とは呼べなくてもベターを目指してデータの可視化や精緻化を進めています。私たち企業の人間は、「グリーンウォッシュになっていないか?」と常に自問する緊張感を持ち、経済合理性と環境配慮を融合させるための試行錯誤と、真摯に説明する姿勢が求められるのではないかと考えています。