ゲットイットは2026年4月に伊藤忠商事と資本業務提携契約を締結しました。ゲットイットは、ITインフラを持続可能な形で活用し続ける社会の実現を「Sustainable Computing®」として掲げ、サーバー・ストレージ・ネットワーク機器などの買取・再流通・第三者保守を通じて、企業のIT資産を循環させる取り組みを進めてきました。
今回の提携では、伊藤忠グループの事業基盤および国内外ネットワークとゲットイットの技術力・品質管理・保守体制を掛け合わせ、IT機器の調達から運用・保守、撤去、再流通、再資源化までを一体で設計する「循環型ITライフサイクルマネジメント」の確立を目指します。
本対談では、伊藤忠商事の専務執行役員で情報・金融カンパニー プレジデントとして同領域を率いる野田俊介氏と、ゲットイット代表の廣田優輝が、IT機器の循環がなぜ経営課題となっているのか、共に目指す市場のあり方、そして持続可能なITインフラの未来像について語っていただきました。
――まず、IT機器の循環や第三者保守の市場をどう見ておられるかをお聞かせください。
野田:伊藤忠商事では、IT機器のリユースや循環の市場はこれから非常に伸びる、ポテンシャルの高い領域だと考えています。単に不要になった機器を再利用するという話ではなく、環境負荷の低減や循環型社会の実現という観点からも、企業にとって重要性が増していると感じています。
加えて、最近は半導体不足などによって新品調達が難しい局面もあり、既存機器をどう有効活用するかが経営課題としても大きくなっています。AI対応などで最先端のIT投資が求められる一方で、安定運用を重視して既存インフラを長く使いたいというニーズも強い。そうした中で、リユースや第三者保守の価値が改めて見直されていると感じます。
廣田:ゲットイットでは創業以来、「まだ使えるものが捨てられているのは、もったいない」という問題意識を持ち続けてきました。事業としては、第三者保守、リユース、ITADなどの循環型ITソリューションを通じて、企業がIT機器を廃棄前提ではなく、価値ある資産として使い続けられる環境を整えてきました。しかしながら実際、IT機器に関しては、日本では使い終わったら廃棄することが前提になっているケースがまだまだ多いのです。
現場のお客様も、本当は「まだ使えるのに」と感じながら廃棄していることが少なくありません。ただ、従来の商習慣や調達の仕組みの中で、なかなか変えられなかった。だからこそ今、一度作ったものを長く使い切るという考え方を、ITインフラの世界でも当たり前にしていく必要があると思っています。

――なぜ今回、両社は組むことになったのでしょうか。
野田:伊藤忠商事では2019年より、子会社のBelong等を通じて中古モバイル機器の端末回収から整備、再販までを行う事業を行い、循環モデルを構築してきました。自社センターでの検品・消去等のオペレーションにより、年間数百万台を処理しており、さらに米国最大級のIT機器リサイクル企業のElectronic Recyclers International(以下、ERI)と合弁会社を作り、リサイクル機能を強化しています。それと別軸の事業成長策として、商品ラインナップの拡大や一層の機能強化が必要だと考えていました。
その中でゲットイットさんは、サーバー、ストレージ、ネットワーク機器まで含めて、非常に幅広いIT機器を扱われている。しかも第三者保守まで含めた高い技術力がある。単に売るだけではなく、品質を担保しながら長く使える体制を持っている点に大きな魅力を感じました。
当社は、販売チャネルや海外ネットワークには強みがありますが、技術の裏打ちがあってこそ本当に信頼されるビジネスになります。だからこそ、高い専門性を持つゲットイットさんとご一緒したいと考えたのです。
廣田:そのようにゲットイットを選んでいただいたことは、このニッチな領域で積み上げてきた技術や実績を評価していただけたということでしょう。身の引き締まる思いです。
私たちはこれまで、エンタープライズ向けのIT機器のリユースや第三者保守に特化して事業を続けてきました。その専門性が、伊藤忠グループの持つ販売力やネットワークと組み合わさることで、大きな価値になると感じています。すでに世界レベルの循環ビジネスを展開されているモバイル領域に、当社の領域であるサーバーやストレージ、通信機器が加わることで、「IT機器全体の循環」を本格的に実現できる。その大きな挑戦を一緒に行っていけるわけですね。

―― IT機器循環における、現在の課題はどのように見られていますか。
野田:これまで中古IT機器というと、新品が買えないから仕方なく使うものというイメージが強かったと思います。ただ、本来はそうではなく、企業のITインフラを持続的に運用していく上で不可欠な選択肢なんです。
企業によっては、最新設備を導入すべき領域もあれば、安定稼働を重視して既存環境を長く使うべき領域もある。その中で、リユース機器や第三者保守は非常に合理的な選択になります。ただ、その価値がまだ十分に認識されていない。だからこそ、単なる”中古市場”ではなく、「持続可能なITインフラ」としてリブランディングしていく必要があると思っています。
廣田:たしかに現場でも、多くのお客様が「まだ使える」と感じながらも、結局は廃棄を選ばざるを得ない状況があります。例えば個人なら中古市場で売れるような機器でも、企業が所有するIT機器になると廃棄が前提になってしまうのですね。
その大きな理由として、データ漏洩の不安があると思います。ゲットイットでは、最高ランクのセキュリティを維持するべく2022年に、データ消去の第三者証明機関「ADEC」にて、国内4社目となる最高ランクのセキュリティレート「消去プロセス認証★★★」を取得しています。またCO2削減と電子廃棄物の量を詳細に追跡した「環境レポート」の提供も実施しています。IT資産の適正処分をすることで、企業の資産運用の効率化はもちろんのこと、環境効率を両立したIT資産管理の実現の一助となることも、多くの方々に知っていただきたいですね。
――今回の提携によって、何を変えていきたいと考えておられますか。
野田:伊藤忠グループには、システムインテグレーター、リース会社、中小企業向け販売網など、お客様との多様な接点があります。そこにゲットイットさんの技術力や商品力が加わることで、これまで届かなかった領域にも提案できるようになるでしょう。
また、単なる販売だけではなく、リユース、第三者保守、最終的なリサイクルまで含めたサーキュラーテック市場全体をカバーできるようになるというのが、非常に大きいと思っています。当社では「マーケットインの発想」を重視していますが、お客様が本当に求めている運用やコスト最適化に対して、どう応えるか。その中で、IT機器循環を当たり前の選択肢に変えていきたいと思っています。
廣田:創業以来行ってきたIT機器のリユースや第三者保守が、なかなか社会にとっての当たり前になっていかないのは、これまでの商慣習と異なるため、企業が最初の一歩を踏み出しづらいという状況がありました。私たち単独でのご提案だと「面白い取り組みですね」で終わってしまうケースも多かったのです。でも今後は、伊藤忠さんの名前があることで、「それならやってみよう」と思ってくださる企業が増える可能性がある。そこは非常に大きな転換点になると思っています。

――それでは最後に、3〜5年後に実現したい未来がどのようなものかをお聞かせください。
野田:まずは、IT機器循環の市場そのものを大きく成長させたいですね。伊藤忠グループのネットワークと、ゲットイットさんの技術力を掛け合わせることで、日本国内だけでなく海外も含めた大きな市場を作れると考えています。現在、モバイル領域では世界トップクラスの規模まで来ていますが、そこにITインフラ機器まで加われば、さらに大きな可能性があり、世界一を目指したいと思っています。
また、単なるリユースというだけではなく、経営合理性や持続可能性の観点から選ばれる市場に変えていきたいですね。
廣田:そのとおりですね。日本ではまだ約8割の企業が、IT機器について廃棄を選択していると言われますが、この割合を少しずつでも下げていきたいです。そのためには「中古でも安心して使える」という信頼を社会の中に根付かせ、IT機器を導入する時点から循環することを前提にした世界を作りたい。そうして3年後、5年後には、「IT機器は循環するのが当たり前」にしたいですね。IT機器を使い捨てるのではなく、価値ある資産として循環させ続ける社会の実現です。このチャレンジに、一緒に取り組んでいきましょう。