2023年07月26日
インドの電子廃棄物(E-waste)問題、その現状と解決策は?

インドの電子廃棄物(E-waste)問題、その現状と解決策は?

人口が世界最多のIT大国インドでは、電子廃棄物(E-waste)の処理能力不足が喫緊の課題の1つとなっています。その現状と、解決にむけた取り組みをお伝えします。

世界第3位の排出量と、深刻な健康被害

2020年に発表された国際調査によると、インドは中国、米国に次ぐ世界第3位の電子廃棄物排出国ですが、処理能力は排出量の4分の1程度しかなく、無認可のリサイクル業者が横行していることが問題となっています(*1)。例えば約5万人が働く国内最大の電子廃棄物の解体市場では、多くの無認可の業者が水銀、鉛、ヒ素などの有毒金属を路上で燃やしており、環境被害や健康被害が懸念されています。それでも金属は貴重な収入源になるため、子どもを含む多くの労働者が、健康被害を恐れながら働き続けているのが現状です(*2)。

解決に向け、政府を中心に取り組みを強化

こうした状況に、政府が手をこまねいているわけではありません。インド政府は2016年から電子廃棄物のリサイクル率向上を目指し、法律による規制を強化しています。2022年11月2日には、より強制力のある「廃棄電気電子機器(管理)規則2022〈E-Waste (Management) Rules, 2022〉」を公布し、2023年4月から適用が開始されました。この規制により、拡大生産者責任*という考え方の下、全ての製造業者、生産者、リサイクル業者が政府のポータルサイトに登録し、廃棄、リサイクルまで責任を持って対処することが求められています(*3)。このような施策に加え、インド政府は国内全域でのリサイクル事業を支援するイニシアティブを立ち上げ、テーマの1つに電子廃棄物を掲げています(*4)。

 

*拡大生産者責任(Extended Producer Responsibility:EPR)
生産者の環境負荷への責任が、製品の設計・製造・使用段階だけでなく、製品が消費された後の廃棄・リサイクルの段階にまでに及ぶという考え方。消費後の製品に対する生産者の責任には、使用済み製品の回収、適正な廃棄処理、廃棄物の減量化、リサイクルの仕組みの整備、リサイクル率の向上が含まれる。世界的に広まっており、2001年に経済協力開発機構(OECD)により拡大生産者責任のガイダンスマニュアルが発表され、2016年には改訂版が発表されている。

 

政府の動きに呼応して始まったKaro Sambhav社の取り組みも注目に値します。同社は、リサイクル方法を模索している生産者を対象に、バリューチェーン全体を検証したうえで、サステナブルで合法的な電子廃棄物の処理を実現するための仕組みを作り、実施まで支援しています。これまでにインド国内の40以上の企業と協働し、16,000トン以上の電子廃棄物を回収しました(*5)。

健康被害に関しては、NGOなどの草の根の活動が功を奏しています。NGOのChintanは、ゴミの山から金属などの有価物を拾い収入を得ている人々に対して、安全な作業方法を指導する活動を続けてきました。その取り組みを評価され、国連グローバル気候アクション賞を受賞しています(*6)。

待ったなしの状況

政府主導による公式なリサイクルの仕組みや施設の増加に伴い、無認可のリサイクル業者が横行する場が減少し、結果として環境汚染、健康被害も減っていくと考えられます。一方で電子廃棄物の増加のスピードは速く、2025年には700万トン、2050年には約1億6,100万トンもの電子機器が廃棄物になると予測されています(*7)。また、今の法律では無認可のリサイクル業者への拘束力が弱く、取り締まりが不十分という指摘もあります(*2)。まさに、待ったなしで施策を進めていく必要があるのです。

グリーンIT編集部
グリーンIT編集部
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