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MEMBER INTERVIEW

一人ひとりの意志が、
会社を変え、社会を動かす(前半)

代表取締役:廣田 優輝


音楽好きで、学生時代はベーシスト、経営者仲間とはメジャーリリースも経験。最近は自社の価値観を内外に発信し、社の一体感を高める求心力として社歌をつくり、社歌コンテストの最優秀賞に入選をはたした。

インタビュー

一人ひとりの意志が、会社を変え、社会を動かす(前半)

リユースIT機器の売買から始まったゲットイットの歩みは、単なるリユースビジネスの枠を超え、いまやサステナブルな社会の実現にも貢献する存在へと進化しています。背景にあるのは、目の前のお客さまの課題に丁寧に向き合いながら、環境負荷や資源の偏在といったグローバルな課題にも少しずつ目を向けてきた姿勢。そうした積み重ねが、ゲットイットの事業に独自の価値を与えてきました。今回は創業者であり代表の廣田優輝さんに、創業当時のエピソードから事業の転機、そしてこれから描く未来の構想まで、じっくりとお話を伺いました。
聞き手:西谷 忠和(ライター)

 

「面白さ」から始まったリユースビジネス

―――ゲットイットを創業した背景を教えてください。

パソコンに興味を持ったきっかけは、大学時代に起きたバイク事故でした。療養中に時間を持て余していたとき、たまたま出会ったのがパソコンです。ケガが治った後は、金銭的な事情もあって秋葉原の近くでアルバイトを始めたのですが、そこで出会ったのがIT機器のリユース市場でした。

私は新品のパソコンを扱うお店で働いていたのですが、常連さんの中にリユース製品を売買している方がいて、仲良くなったことが転機でした。

当時の秋葉原は、リユースショップ同士が仕入れた商品を転売し合う、いわば“目利きの勝負”の世界でした。逆にいえば、誰にでもチャンスがある世界でもあったんです。「これは自分にもできるんじゃないか」と思い、真似してみたのが最初でした。

この常連のお客さまから学んだことで、パソコンと比べて需要の見えにくい業務用機器──特にモニタも付いておらず、用途もよく分からないような通信機器やサーバー──を再生することに、強い魅力を感じるようになりました。そこから、通信機器やワークステーションといったジャンルを中心に扱うようになったんです。価値がないものに価値を生み出したり、修理したりするプロセスを得て、付加価値を与えるというのが面白いビジネスだなと思って。

最初は「個人でできる範囲でやってみよう」という軽い気持ちで始めたのですが、気がつけば取引量も売上高も増えていて。「それなら、ちゃんと会社にしたほうがいいかもしれない」と思うようになり、自然な流れで法人化へと踏み出しました。大学3年の冬には月に100万円ほどの売上が立つようになっていて、家族に背中を押されたのも大きかったですね。

法人化とはいえ、スタートは実家の屋根裏部屋でした。電話回線はISDN、家賃もゼロ。次に借りたのがガレージで、本当に「ガレージ創業」そのものでした。全てを自分でこなし、送り状を作って、梱包して、通帳記帳に行っては入金の確認と消し込み。今思えば、ビジネスというよりも、好きなことに没頭していただけだったかもしれません。

取引先も、はじめは秋葉原の他のリユース店から仕入れをしていたのですが、通ううちに「この人たちはどこから仕入れているのか?」その先の取引ルートを探すようになり、徐々に仕入れ先や販路も広がっていきました。

リユースや環境配慮といった理念が最初からあったわけではありません。「この仕事、面白いな」──それが出発点。目標も理念も後からついてきたものです。とにかく「やってみる」「できるようになっていく」というプロセスそのものが、当時は楽しくてしょうがなかったですね。

“個人商店”から大手に信頼される企業へ──進化のターニングポイント

―――最初一人でやっていた事業を組織化していくにあたってターニングポイントになったのは、どういった点ですか?

組織化という意味で最も大きな転換点だったのは、「事業の広がり」と「人との関わり方」の両面で、大きな変化が起きたことです。

事業面でのきっかけは、2005年ごろに始めた海外との貿易でした。当時、国内で販売するとどうしても2万円程度の価格にしかならないリユース機器があり、それを1万円〜1万2000円で仕入れていた私たちとしては、数千円の利益しか出せず、ビジネスとしての継続に限界を感じていました。ところが、同じ商品を2万円以上で買っていく業者がいるという情報を耳にして、「どうしてそんな価格で買えるんだ?」と調べた結果、それが海外のバイヤーであることがわかりました。

その発見が、ゲットイットにとって大きなターニングポイントとなりました。海外では、リユースの業務用機器が高く評価されていたのです。英語もあまり話せないなかで、eBayのようなプラットフォームを使い、見よう見まねでスタートした貿易でしたが、そこから一気に市場が広がり、私たちの扱う商品の価値を再定義する大きな一歩となりました。

実際に輸出を始めてみると、海外のお客さまの反応は千差万別でした。高圧的な人もいれば、まったく音沙汰のない人、やり取りの丁寧な人、支払いのスムーズな人など…。相手の本気度や相性を見極めながら、何度も失敗と学びを繰り返し、ようやく信頼できる取引先とつながっていく──そんな手探りの経験が、のちの組織運営にも通じる感覚を育ててくれたと思います。

さらに、「即答してくれるかどうか」「買取り量と価格のバランス」「商品の価値をどれだけ理解しているか」といった見極めの視点も、重要な判断軸として養われていきました。リユース品という“時価”の世界で、相手の誠実さやビジネスのセンスを読み取り、最適な取引先とつながっていく。そのプロセス自体が、まさに駆け引きの連続で大変でしたが、面白さでもありました。

一方で、人との関わり方の転換点となったのは、2012年頃に保守(第三者保守)サービスを始めたことです。当時、営業担当だった新垣(現在は執行役員)が「保守ニーズがあるのでは」と提案してくれたことをきっかけに、国内の大手企業との取引が少しずつ広がっていきました。

当時は「第三者保守なんて、本当にニーズがあるのか?」と半信半疑だったのですが、まずはやってみよう、とチャレンジしたのが始まりです。第三者保守とは、メーカーの保守契約が終了したIT機器に対して、専門業者が代替の保守サービスを提供する仕組みです。近年ではコスト削減や環境負荷の軽減を目的に、多くの企業が注目していますが、当時はまだ一般的とはいえない存在でした。ただ、私たちがやってきた整備や再生のノウハウが、そのまま活かせるかもしれない。そう思って始めてみることにしたんです。

この第三保守事業のスタートによって、輸出買取り一辺倒だった事業にも変化が生まれます。それまでは「困ったときに仕方なくリユース品を選ぶ」というのが国内企業の実態でしたが、企業側がコストや計画性を意識して、リユースを前提に活用するというニーズが少しずつ増えてきたのです。そこから、エンタープライズ領域におけるリユースニーズがあることが見えてきました。

とはいえ、私たちは裸一貫で立ち上げた“個人商店”です。エンタープライズ向けの仕事の進め方も、ビジネスの作法もまったく分かっていませんでした。私の義父が外資系IT業界出身で、ビジネスパーソンとしての基礎をアドバイスしてくれたことが大きな支えとなりましたが、はじめの頃は、紹介で訪問しても「上からの指示だから対応している」といった雰囲気で、実際に商談につながることはほとんどありませんでした。

そこに転機をもたらしたのが、大手証券会社出身の営業担当・常世田の加入でした。Tシャツにジーンズ姿が基本だった私たちに「それじゃ駄目だ」とスーツにネクタイで出社するように指導し、営業の立ち居振る舞いも大きく変化しました。加えて、大手企業との営業経験がある人材が増える中で、ビジネスの進め方、提案の仕方、相手の懸念ポイントの見極め方などを一つずつ学び、身に付けていきました。

これまでのように「いいものを安く仕入れて、安く売る」だけでは通用しない。相手のニーズに寄り添い、価値ある提案をする。そうした姿勢を大切にすることで、ゲットイットは「商売人集団」から「信頼される企業」へと自ら変わっていきました。

―――人との関わり方などを通じて、ダイナミックに急成長していったわけですね。

エンタープライズ事業につながる部分ですが、2017年には倉庫の移転とともに「魅せる倉庫」というコンセプトを導入。きっかけは、アメリカのリユース企業を視察したことです。セキュリティ管理や品質管理の徹底ぶりを目の当たりにし、「日本でもここまでやるべきだ」と強く感じました。

営業担当がどれだけ言葉を尽くしても、現場での取り組みには敵わない。だからこそ、お客さま自身に現場を見てもらい、「ゲットイットがどんな品質基準で再生しているのか」「どんな姿勢でリユースに取り組んでいるのか」を体感してもらう。そうした“現場起点の営業”へと変わっていったのです。

今では、倉庫が商談の場となり、現場スタッフもお客さま対応に参加することで、会社全体がひとつのチームとして見られるようになりました。エンタープライズの顧客にとって、遠い存在だった「リユース機器」が少しずつ身近な選択肢へと変わっていく──商売人としての「良いものを安く売れば買ってもらえる」という発想から脱却し、相手のニーズに合わせて、価値ある提案を行う。そんな組織に、ゲットイットは進化してきたのだと思います。

循環型社会に貢献する企業へ。「売るだけ」からの脱却

―――その中で会社としてのスタンスや方針に変化はありましたか?

ゲットイットは2018年頃までは、正直なところ「計画を立てて、目標に向かって進む」というより、目の前のことに一生懸命取り組んできた会社だったと思います。買取り、販売、保守――その時々のお客さまのニーズに応じて、必要とされるサービスを提供することに集中してきました。

でもある時、「自分たちがやっていることは、社会に対してどういう意味を持つのか?」を整理してみようと思ったんです。買い取った機器を販売し、保守し、使い終わったものを引き取る。この一連の流れを見つめ直してみると、結果として“コンピューターのサステナビリティ(持続可能性)”に向けた活動をしていたんだということに気づきました。

つまり、製品を長く使ってもらい、役目を終えたら次の人に使ってもらう。最終的には国内(あるいは海外で)リサイクルして循環させる。その仕組みこそが、いまの社会にとって必要なことなんじゃないかと。さらにその背後には、例えばレアメタルをめぐる紛争の問題や、リサイクル名目での海外輸出からの不法投棄といった、可視化しにくい社会課題が存在しています。

ITの利便性は確かに私たちの生活を変えました。でもその便利さの裏で、目に見えないところで誰かが負担を強いられている。そうした構造を見過ごしたままではいけないという思いが強くなって、私たち自身で「事業のあり方」を変えていこうと決めたのです。

そして『サステナブル・コンピューティング』というコンセプトを掲げ、単なる機器の取引にとどまらず、その前後にある社会課題も含めて取り組むようになりました。それが会社の方針としての大きな転機だったと思います。

もともと買取り、保守、販売といったサービスは、それぞれが独立して存在していました。しかし、事業の整理を進めていく中で、これらが一つの流れとしてつながり、「私たちが何をしている会社なのか」というストーリーが明確になってきたのも、その頃からです。

とはいえ、掲げているポリシーにも課題はあります。例えば、私たちが販売した機器が、その後どう扱われるのか。これをすべて知るには限界があります。初回の取引先は信頼できる事業者だったとしても、2次流通、3次流通と進む中で、コントロールできない部分が出てきます。だからこそ、少なくとも最初に提供する相手については、きちんとした実績があるか、業界で信頼されているかなど、事前にしっかりと確認するようにしています。

それからもう一つ、社内においても大きな変化がありました。コロナ禍を機にリモートワークが主流となり、社員も50名から一気に100名を超えるまでに急増しました。それまでは、全員がオフィスで顔を合わせ、すぐそばで会話できる環境がありましたが、オンライン中心の働き方になると、業務は進んでも、価値観の共有や細やかなコミュニケーションが希薄になってしまったのです。

そこで私たちは、「自分たちはどんな想いでこの仕事に取り組んでいるのか」「お客さまとどう向き合うのか」といった会社の姿勢を、あらためて言葉にして明確にする必要があると感じました。2022年に、ミッションを策定し、全社員に共有したのもそのためです。事業の成長と、組織としての一体感。その両方を大切にするために、会社のあり方や方針も、大きく変わってきたと感じています。

インタビュー後半へ続く

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