レアメタルは「紛争鉱物」とも呼ばれ、採掘地域における紛争の原因となり「非人道的な行為」や「環境破壊」を引き起こすことが問題視されています。この問題は国際社会から注目を浴びており、世界規模で解決に取り組む必要があります。限られた資源を争うのではなく、紛争鉱物の需要を減らして使用済みの製品から再生産するなど、「循環させる仕組み」がいま求められています。
本問題の解決策のひとつになるのが「ITAD(Information Technology Asset Disposition)」です。本記事では、ITADがレアメタルや紛争鉱物問題の解決にどのように寄与できるのかについて解説します。
紛争鉱物問題とは?レアメタルが使われている代表的な製品は「スマホ」や「パソコン」
レアメタルは、先進技術製品の製造に欠かせない重要な金属鉱物資源です。高温超伝導体からLED、電気自動車のバッテリーなど、多岐にわたる製品に用いられています。注目すべきは、「スマートフォン」や「パソコン」などのIT機器に利用されていることです。これら機器の心臓部である半導体の製造には、レアメタルが欠かせません。
現在、日本においては「人口の90%以上」がスマートフォンを使用しており、私たちの生活に欠かせない存在となっています。近年は世界的にスマートフォンやパソコンのが普及し、半導体の製造需要が増しており、大規模なレアメタル消費が進行しています。
政治的に不安定な地域で採掘される場合、レアメタルは「紛争鉱物」とも呼ばれます。鉱物を密輸することで得た利益が武装勢力の資金となり、紛争を長期化し悪化させることが名前の由来です。紛争鉱物の代表例として、コンゴ民主共和国やルワンダから産出される「コルタン」「カッシテライト」「タンタル」などが挙げられます。これらの資源がレアメタルに分類され、採掘や生産の過程で深刻な問題を引き起こしています。
たとえばコンゴ民主共和国の東部地域では、非正規の武装勢力がコルタンやタンタルの採掘を支配しており、得た収益を用いて「武器の購入」や「勢力の拡大」に利用しています。また、紛争地域で働く人々は過酷な労働環境を強いられることがあり、「児童労働」や「強制労働」などの人権侵害に直面しています。さらに、紛争地域の鉱山での採掘活動は「環境破壊」をもたらし、森林の伐採や野生生物の生息地の破壊など、地球環境への負荷も増大しているのです。
各国で進む紛争鉱物の規制強化。企業の「IT機器リユース・リサイクルの必要性」の高まり
こうした問題を受けて、国際社会では「紛争鉱物に関する規制強化」の動きを進めています。アメリカ合衆国では、2010年にドッド・フランク・ウォール街改革・消費者保護法(Dodd-Frank Wall Street Reform and Consumer Protection Act)が制定され、企業が紛争鉱物を使用していないことを証明する報告が義務付けられました。また、EU(欧州連合)も同様の制度を導入し、紛争鉱物をEU内に持ち込む輸入者に対する「サプライチェーン・デューデリジェンス義務」を規定しています。
日本は独自の国内規制を制定していませんが、欧米企業と取引を行う場合に規制の準拠が求められます。規制に対応するため、各国の企業は「サプライチェーンの透明性」を高めて、サプライヤーから「紛争鉱物を含まない製品」を購入する取り組みが進んでいます。また、企業は「紛争鉱物を含む製品のリユースやリサイクル」を促進して、紛争鉱物の需要削減に取り組む必要性が高まっているのです。この紛争鉱物問題の解決に、IT機器のリユースやリサイクルが大きな役割を果たします。
企業で利用する「パソコン」や「サーバー」にはレアメタルが使われており、近年はこれらIT機器の更新サイクルが非常に短くなっています。その結果、不要になるIT機器が増加し、新たなIT機器のと中核部品である半導体の製造需要が高まることに。IT機器の製造は、多くのエネルギー消費とCO2排出を伴うため、地球環境への影響が懸念されます。
本問題の解決策として、各企業は「IT機器の更新サイクルを長くする」とともに、リユースやリサイクルを推進することで、IT機器の製造需要を適切に調整することができます。その結果、半導体を含むレアメタルの需要を減らすことにつながり、エネルギー消費とCO2排出量を削減することが可能です。
各企業は、これらの「循環型経済に対応した取り組み」を通じて社会的責任を果たし、環境保護に貢献できるでしょう。また本取り組みは、「企業の信頼性」や「ブランド価値」を高める効果もあります。環境に配慮したCSR活動に取り組むことで、企業イメージの向上や顧客満足度の向上に寄与し、企業の長期的な成長を支える要素となるでしょう。IT機器のリユースとリサイクルを推進することで環境保護に貢献しつつ、自社のブランド力を高めることができるのです。
レアメタルを含むIT機器のリユース・リサイクルに「ITAD」の利用を推奨
レアメタルを含むIT機器のリユースやリサイクルを推進する上で、いくつかの課題も存在します。循環型の経済に対応できるように、IT機器を処分・更改するには「機器の安全な撤去」や「データの完全消去」「環境負荷の軽減」が欠かせません。環境や法律などの規制を守りながら「適切な手順」で作業を行わなければ、個人情報の漏えいや環境汚染など重大な事故につながる可能性があります。こうした課題の解決に役立つのが「ITADサービス」です。
ITAD(Information Technology Asset Dispositio)は「IT資産の適正処分」のことで、専門のサービス会社が提供する「IT資産の廃棄やリユース、リサイクルなどのプロセス管理」を行うサービスです。企業で不要となり使用されなくなったIT資産を、安全かつ責任をもってリユースやリサイクルを行います。ITADのサービスは、IT機器の状態に合わせて「製品としてのリユース」「パーツとしてのリユース」「マテリアルとしてのリサイクル」を行い、なるべく価値の高い状態で循環させます。
製品のリユースが難しい場合はパーツとしてリユースを行い、パーツのリユースが難しい場合はマテリアルとしてリサイクルを実施。このように循環させることで、廃棄予定だったIT機器が「資産」となり、売却による利益を得られる可能性もあります。ITADサービスを利用することで、リユースやリサイクルによって「資産価値」を最大限に引き出し、環境に最大限配慮した方法で電子廃棄物の処理を行い、環境負荷を低減できます。
レアメタル・紛争鉱物の問題に向けて。ゲットイットはITADでサスナビリティ向上に取り組んでいます
レアメタルや紛争鉱物問題は、企業やそこで働く一人ひとりが当事者意識を持ち、問題解決に取り組むことが重要です。私たちゲットイットは、IT機器の導入からリサイクルまでライフサイクル全体のサスティナビリティ向上を目指し、IT機器の保守やリユースなどの事業を展開しています。第三者保守やEOSL延長保守、IT機器のレンタルサービス、ITADサービス通じて、IT機器の「長寿命化」や「二次流通」を促進。廃棄物をなくし資源を循環させて、自然を再生するための循環型の経済システム「サーキュラーエコノミー」に貢献するビジネスに取り組んでいます。レアメタルの「紛争鉱物問題」や、電子機器廃棄物の急激な増加に伴う途上国への不正な輸出、不法投棄や不適切処理などの「E-waste問題」に対して、NPO等との連携を強化してこれら問題の解決を図っていきます。
ゲットイットはクライアント企業さまに寄り添いながら、データのセキュリティポリシーと環境方針に適合する形で、ITADプロセスを支援しています。ITADサービスを活用し、リユースやリサイクルを推進したい企業さまは、ぜひゲットイットにご相談ください。お客さまの大切な情報資産を守った上で、「対象機器の撤去」や「データの消去」「リマーケティング(再販)による価値回収」など一連のプロセスに対応いたします。