2021年09月01日
E-Waste(電子ごみ):富士山と肩を並べる山

E-Waste(電子ごみ):富士山と肩を並べる山
※E-wasteと富士山の比較はイメージです。実際の推定値は、E-waste年間発生量は約5360万トン、富士山の重量は1~3兆トンとされています。

 

 

数週間ごとに、携帯機器に搭載されているカメラの質が向上し、再生できる音楽の音がクリアになり、私たちの次の要求を汲む方法や、画面上で認識できる色が鮮明になっています。私たちは身の回りのテクノロジーをアップグレードする一方で、使い物にならなくなった製品がどうなるのか、普段はあまり気に留めません。しかし、最先端のテクノロジーを手に入れるというサイクルには、見落としがちな隠れた代償がつきものです。それは、E-Wasteがもたらす環境への負荷です。

E-Wasteとは、廃棄されたあらゆる電子機器を指す言葉です。これには、古くなったものだけでなく、動作するもの、壊れたものも含まれています。E-Wasteという言葉は、家電製品、通信機器、医療機器、オフィス機器など、多くの品目を含んでいます。

 

 

テクノロジーの進化がもたらす環境コスト

グローバルE-Waste統計パートナーシップの共同制作物であるグローバルE-Wasteモニターによると、2019年に、世界中で約5,360万メトリックトン(1メトリックトンは1000kgに相当)の電子廃棄物が発生しました。前年比で21%増加しています。2030年までには、発生するE-Wasteは7,400万トンになると予測されていますが、1年間でリサイクルできるのはこのうちのわずか20%に過ぎません。

E-Waste

今日の日本の廃棄物管理は高水準とみなされていますが、過去には廃棄物管理の不備による環境への悪影響を経験しています。その代表例が、香川県の豊島です(地元では「ゴミの島」と呼ばれていました)。産業廃棄物処理業者が、重金属などの有害物質を含む約62万㎥の産業廃棄物を豊島に不法投棄し、土壌や地下水に深刻なダメージを与えました。

産業廃棄物の総排出量の推移

このグラフ*が示すように、90年代以降、日本における産業廃棄物の発生量の増加は抑制されましたが、その後も高い水準での横ばいが続いており、私たちの経済活動が生みだす大きなコストとなっています。

 

 

E-Wasteを削減するためのグローバルな取り組み

E-waste削減の鍵となるのはリユースであると言われています。アイルランド環境保護庁(EPA)は、E-Wasteの再利用を促進するためのプロジェクトを実施しました。
EPAは、E-waste管理モデルに廃棄物ヒエラルキーの概念を採用し、リサイクルなどの他の対策よりもE-wasteの発生抑止を優先しています*。

E-Wasteヒエラルキー
Michael Johnson, Kathleen McMahon and Colin Fitzpatrick.(2018)を元に作成

 

上の図が示すように、電子機器が製品の段階にある間は、リユースなどによるE-wasteの発生の抑止が最優先事項となります。その次に機器の使用期間を延長するための修理や改修の追加プロセスを含む「リユース準備」の段階があり、リサイクルは第3の選択肢として位置づけられています。なぜEPAでリサイクルがあまり推奨されないのかと不思議に思うかもしれませんが、その答えは、すべての原材料がリサイクル可能なわけではなく、分解されるまで何十年も環境中に留まるからです。

 

 

サステナブル・コンピューティングとグリーンIT

ゲットイットでは、未来の世代のためのクリーンな環境と天然資源へのアクセスの権利を損なうことなく、持続可能な技術革新を実現するために、IT機器のリユースを促進することが重要であると考えています。使えるものは長く使い、使い終わったら次につなげるーーこれを私たちの目指すべき姿と考え、「サステナブル・コンピューティング*」として提唱しています。

サステナブル コンピューティング

上の図が示すように、保守、販売、買取りなどのグリーンIT*を、お客様のシステムのライフサイクルにあわせてご提案します。そうすることで、環境負荷の少ないIT運用をサポートします。

IT業界にいる私たちが、この分野のE-Wasteを減らすことで、社会に変化をもたらすことができると信じています。しかし、このような価値に賛同していただけるパートナーの協力なしには、変化を起こすことはできません。コラボレーションは、環境を保全し持続可能な開発のサイクルを推し進めるための重要な一歩なのです。

昨年度は、新たに約50社の企業にご賛同いただき、廃棄スキームからリユースを前提とした買取りスキームへの移行をご支援しました。IT機器が確実なデータ消去を経た後、次のユーザーの下で2回目のライフサイクルを送ることは、ステークホルダーに経済的な付加価値を与えるだけでなく、新たなE-Wasteの発生を抑制し、地球環境に貢献しています。

私たちはグリーンITを通じて「消費」を「価値の再生」に変えているのです。これこそが、私たちにとって循環型経済が真に意味するものです。信念と行動は、たとえ山が富士山のように高かったとしても、その山を動かすことができるでしょう。

*Ministry of the Environment. (2014). History and Current State of Waste Management in Japan. (https://www.env.go.jp/en/recycle/smcs/attach/hcswm.pdf)
*Michael Johnson, Kathleen McMahon and Colin Fitzpatrick. (2018). Research of Upcycling Supports to Increase Re-use, with a Focus on Waste Electrical and Electronic Equipment (UpWEEE). (https://www.epa.ie/publications/research/waste/research-241-research-of-upcycling-supports-to-increase-re-use-with-a-focus-on-waste-electrical-and-electronic-equipment-upweee.php)

*ITもサスティナブルの時代 〜ITハードウェアの“もったいない”から生まれたゲットイットの「サスティナブル コンピューティング」とは?

*グリーンIT:中古IT機器の販売、保守、買取など環境負荷の少ないIT運用を可能にするゲットイットのサービスの総称。