6月28日、29日にドイツのフランクフルトで開催された、E-waste World Conference & EXPO に参加してきました。このイベントは、E-waste(電子ゴミ)リサイクル、バッテリーリサイクル、貴金属リサイクルの3つの分野からなる、リサイクル・リユース業界のランドマーク的なイベントです。
メッセフランクフルトといえば、世界的な見本市が多く開催されることで知られている大規模展示会場です。私たちの会場は、Forumという場所。
展示会はワンフロアでこじんまりとした印象でしたが、並行して開催されたセミナーが非常に充実していたので、少し紹介したいと思います。
セミナーはE-wasteリサイクル、ITAD、バッテリーリサイクル、貴金属リサイクルの4つのトラックがあり、朝9時から夕方まで各トラックで分刻みで開催されました。私は基本的にITADのトラックに参加していましたが、他のトラックのテーマも興味深く、合間を縫って別のトラックにも参加する、という大忙しの2日間を過ごしました。
1日目、デンマークのコンサルティング会社Circ.ecoのCEO、Lars Olesen氏のセッションでは、データセンターにおけるIT機器の環境負荷の比較が示されました。Olesen氏は、再生エネルギーの普及率により同じ機器を長く使うことのインパクトが変わってくることに着目し、ポーランドとデンマークを例にデータをまとめました。再生エネルギーの普及率がヨーロッパの平均水準より低いポーランドでは、サーバーを10年使った場合、機器のライフサイクル全体のCO2排出量のうち8割近くを運用フェーズで排出することになります。一方、再生エネルギーの普及率が高いデンマークで試算すると、機器を40年使った場合でも6割以上のCO2が製造由来で排出されることが明らかになりました。もちろん、40年も同じ機器を使うということは現実的ではありません。再生エネルギーの普及率が高くなればなるほど、製造時におけるCO2排出量のインパクトが大きくなり、今ある機器をなるべく長く使うことの重要性が増してくるということを学びました。
2日目、HDDメーカー大手SeagateのHugo Bergmann氏によるセッションでは、HDDのリユースはHDDのリサイクルと比べて275倍の環境貢献価値があること、標準化や透明化を通じたリユース市場のさらなる整備を進めることでHDDのリユースを促進していく必要があることが示されました。Seagate社の環境への問題意識については、6月上旬にBBCでリリースされた”Why millions of usable hard drives are being destroyed”*(なぜ利用価値のあるHDDが何百万台も廃棄されてしまうのか)という記事でも、台湾での実証実験とともに紹介されています。製造メーカーにも、循環型社会の構築に向けた取り組みを進めなければいけないという危機感があることを感じました。
そのほかにもNokiaやLogitechなど製造メーカーの登壇もありました。イベント全体を通じて、E-wasteの問題はリサイクルをどうするかという最終段階の問題としてだけではなく、そもそもの設計の段階からいかに修理しやすく長く使える製品をデザインするかという川上の問題としても非常に注目されていることを実感しました。近年ヨーロッパでは「修理する権利」という言葉が頻繁に使われるようになりました。このテーマについては、次回のグリーンITブログで詳しく取り上げたいと思います。
おまけ
夜は地元のサマーフェストに参加しました。ここでも環境への配慮を実感することがありました。
このような野外イベントでは、使い捨てのコップが使われるのが当たり前と思っていましたが、ここではドリンクは全てグラスで提供されていました。お店でデポジット込みでドリンクを購入し、飲み終わったらグラスをお店に戻すとデポジットも戻ってくる、という仕組みです。拡大生産者責任(提供者責任)の考え方がこんなところにも・・!と驚きました。
BBC“Why millions of usable hard drives are being destroyed”2023年6月6日
(https://www.bbc.com/news/business-65669537)