『保守コストの削減』~保守レベルの正しい選択がカギ

 
「保守サービスはベンダーに任せておけば安心、安全」という漠然とした付加価値に多くのコストをかけている。

これは日本企業、とりわけ大手大企業に強く見られる傾向だ。では、具体的にベンダー保守でないとどこがどのようにリスクがあるのか、正しく把握できている管理者は意外と少ないのではないか。30年近く保守サービス業界に身を置いていると、その多くは『漠然とした安心感』から多額のコストをかけてベンダー保守を選択している企業が多いのではないかと感じる。

 

確かに導入直後から3年はベンダー保守以外を選択するメリットはない。製品やベンダーにもよるが大体3年間はベンダー製品保証(ワランティ)があるし、一方ではファームウェアなどの技術更新のリリースも多く、構成変更も比較的多い時期にあたるため、ベンダー保守が最適の選択だ。

しかし、それ以降、特にEOSLを迎える1~2年前ではまったく状況が異なる。もちろん例外はあるが、初期不良パーツの排除も進み、既知障害事例から安定稼働のKnow Howが集約・対策され、各種ファームウェアの適用を繰り返し実施することでシステムは安定し、システム変更の予定もない、そうしたシステムに支払う保守費用こそ、コスト削減の最有力候補ではないのか。

 

また、別の要因として、まだハードウェアの調達コストが非常に高価で現在の約10倍以上を要していた2000年代前半まで(N+1設計)は別として、ハードウェアのスケールアウト設計(N+α設計)が一般的になると、保守費用として多くの投資を行うよりも、数台の障害をあらかじめ見込んで要件定義してしまう方が安価に収まるな時代になった。そのような設計において、その機器単体の保守性に対する要件は下がっているはずなのに、保守コストが適正に管理されているという例は少ないように思われる。(図1)

(図1)導入時期別保守サービス事情
1〜3年 ベンダーワランティがあり、環境に合わせた各種FW、Patchの適用期間。
新規障害も多くベンダーのサポートが必須。
4〜5年 システムの安定稼働期に入るが、構成変更がある場合、新規のバグを踏む可能性あり。
6〜7年 安定稼働期。構成変更もなく、既知障害以外の障害もなくなり、物理障害主体になる。
7年〜 EOSLを迎え、ベンダーのパーツ供給が止まる。
ベンダー保守が受けられたとしても既知障害以外の対応は行わず、パーツ市場からのパーツ調達が必要となる。

ベンダー保守のメリットは、製品開発チームへのエスカレーションパスとPatch提供、ファームウェア更新による新規障害対応などが挙げられる。商用システムの本番系など、常に最新のセキュリティレベルや技術更新の適用が要求され、高可用性の確保が要求されるシステムでは依然ベンダー保守が望ましいと言える。しかし、それ以外のシステムであれば、もしくはEOSL後もまだ十分使えるシステムを活用したいと考えると、保守コスト削減のポイントが見えてくる。

極端な例として、障害がほとんどないシステムの保守契約に見切りをつけ、パーコール対応にしてしまうという大胆な選択をするユーザーも散見されるが、それもおすすめできない。理由は多くのベンダーでは保守契約ユーザー向けに計画的にエンジニアや保守パーツなどの資源が配備され、パーコールユーザー向けにはベストエフォートで対応スケジュールが組まれるためである。場合によっては2日後、3日後の保守対応となることも珍しくない。

 

では、導入後3年が経過し、製造上の不具合のあるパーツが排除され、Patchやファームウェアの適用も適時実施し、安定期を迎えたシステムで、構成変更の予定もないシステムを想定した場合、機械的な障害が中心となる。まず大前提として、保守パーツの供給体制と突発的な障害に対し、管理者が想定したダウンタイム内に確実に保守サービスが受けられる体制の維持が必要なのは言うまでもないが、既知障害の対策が既に完了しているシステムでその他に求められる保守サービスの要件とは何だろうか。(図2)

(図2)ベンダーにしか行えないハードウェアサポートの例
開発チームへのエスカレーション
製造上の不具合に対する技術更新、瑕疵保証
新規ファームウェアの製作、提供
Root Cause Analysis

とりわけRoot Cause Analysisの要求は、メインフレーム時代の古い習慣の名残りなのかそれを知り得たところでユーザーが具体的な対策が取れる訳ではない。同様に新たに機能を追加したり、構成の追加もないとすれば、ソフトウェアサポートも削減の対象となるし、新たなバグを警戒する必要がなくなれば、プロアクティブサービスや新規のファームウェアの提供も必要ないとするならば、必ずしもベンダー保守である必要はない。現実的な視点に立てば、必要な要件とは言えないのではないか。

必須であるといえるものは、先に述べた基本的な不良部品の交換体制と、その前後作業でベンダーが行っていた作業とユーザーの運用体制とのギャップを埋める作業であり、システムの要件毎に最適な保守レベルを見極める事ができれば、第三者保守という選択が視野に入ってくる。(図3)

(図3)導入時期別保守サービス事情
  導入~3年 On Support EOSL後
N+1商用系本番機 ×
N+1商用系縮退機 ×
N+1商用系本番機 ×
N+1商用系縮退機 ×
N+1検証/開発機 ×
N+αスケールアウト ×

特に欧米では20年以上前から第三者保守の利用が進み、近年日本でも採用が進んではいるが、両者の差は日本企業の比較的保守的な思考が要因の一つではないかと筆者は見ている。今、日本企業が置かれている海外競合とのタフな競争を勝ち抜くため、まずはCAPEX比率の大規模な改善が急務と思われる。OPEX削減にはもう猶予は残されていない。

株式会社ゲットイット
森 秀嗣

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