その課題の一つとして指摘されているのが、レガシーシステムの運用保守コストによるIT投資資源の圧迫だ。つまり、日本の多くの企業がIT資産の最適化という課題に直面している。端的な例として、しばしば主要な調査会社より指摘されているのが、日本企業のいびつなIT投資予算比率だ。全IT投資予算のうち、実に75〜80%がレガシーシステムの保守や運用に充てられており、DX、戦略的IT投資などの新規投資には20〜25%程度しか充てられていないというのだ。DXなどの戦略的なIT投資を行うには、少なくとも維持管理コストを60%程度に抑える必要があると言われており、つまるところ、まずDX投資を可能にするCAPEXを確保するのが先決ということだ。
DX 推進のフィニッシュブロー
IT予算のCAPEX化は安定稼働を図りつつ、運用の効率化やコスト削減、資源の有効活用など、IT投資の抜本的な見直しが必要となるため、そう簡単な取り組みではないが、企業にとってDX推進は待ったなしの状況だ。速やかにIT戦略に沿った投資が行える体制を整える必要がある。
そこで昨今日本でも急激に利用が進み、ユーザー企業のITコスト(OPEX)削減に欠かせないソリューションとして注目を集めているのがマルチベンダー保守や第三者保守と呼ばれるサービスだ。
一般的にメーカー保守は5年~7年で終了する。そのためこれまで多くの企業がその都度システムの更改に予算を投入してきた。問題はまだ利用可能なシステムであるにも関わらず、一定期間ごとにメーカーの都合でこれらの莫大な予算と貴重なITリソースの投入が生じることだ。
第三者保守はメーカー保守が終了したIT機器をユーザー企業の要求に応じて、第三者保守ベンダーがメーカーに代わって保守サービスを提供するというものだ。これをうまく活用することで長期的なコスト削減とユーザー企業主体でのシステム更改時期を判断できるようになる。
第三者保守はもはや亜流ではない
日本の第三者保守利用率はまだまだ欧米並みとは言えないが、逆に言えば日本のユーザー企業はグローバルで競合する世界のライバル企業と比べ、健全なIT投資に向かうための改革に後れを取り、また、まだ改善の余地が残されているということを意味している。
欧米企業の多くは10年以上前からシステム毎に必要な保守レベルを細かく定義し、手厚いサポートが必ずしも必要のないシステムを見極めつつ、第三者保守をうまく活用してメーカー主導のサポートライフを適切にコントロールし、保守費用とシステム更改に関わる様々な新規投資を抑え、DX推進や人材の確保など、戦略的なIT投資を推進している。既にそうした保守マーケットを第三者保守が支えている。
森 秀嗣